遺族年金は亡くなった夫の年金の4分の3くらいもらえるというのは、大きな誤解だそうです。
「亡くなった夫の年金の」ではなく、「亡くなった夫の老齢厚生年金の」が正しいです。
さらに、残された妻が老齢厚生年金をもらっているときは、遺族年金はさらに少なくなるそうです。
最初に、遺族年金と言っても次の二つがあります。
「遺族基礎年金(国民年金)」と「遺族厚生年金(厚生年金)」です。
遺族基礎年金は「子のある配偶者」に支給されるので、子が独立した配偶者はもらえません。
「遺族厚生年金」は、夫が会社員時代に加入していた厚生年金の一部をもとに算出され、一定の条件を満たせば受け取れます。
その支給額は、亡くなった夫の「報酬比例部分」の4分の3が基本です。
もう一度繰り返しますが、「遺族年金は亡くなった人の年金の4分の3」ではなく、「遺族厚生年金は亡くなった人の厚生年金の報酬比例部分の4分の3」なのですね。
ベースとなるのは基礎年金(国民年金)を含めない厚生年金の報酬比例部分です。
遺族厚生年金の計算方法
65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利のある人が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは
①「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」
②「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」
①と②を比較して高い方の額が遺族厚生年金の額になります。
このルールで試算してみると
亡き夫の老齢厚生年金の報酬比例部分が、年額140万円だとします。
残された妻の老齢厚生年金の報酬比例部分が、年額18万円だとします。
このルールで計算すると
① 140万円×3/4=105万円
② 140万円×1/2=70万円
18万円×1/2=9万円
合計79万円
①と②の高い方が遺族厚生年金になりますので、遺族厚生年金は105万円となります。
さらに加えて厳しいルールがあります
「65歳以上で亡き夫の遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金を受ける権利がある妻は、自分の老齢厚生年金は全額支給となり、亡き夫の遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる」というルールです。
※妻に先立たれた場合は、亡き夫は亡き妻と置き換えて読んでください。
上の例でいうと
遺族厚生年金は年額105万円
自分の老齢厚生年金は年額18万円ですから
自分の老齢厚生年金の年額18万円は全額支給となります。
そして、遺族厚生年金105万円のうち18万円が支給停止となり、支給額は差し引き87万円です。
結局残された妻がもらえる年金は
妻の老齢基礎年金 満額で年額79万5千円
妻の老齢厚生年金 年額で18万円
遺族厚生年金 年額で87万円
合計で年額184万5千円 月額では約15万3千円 となります。
亡き夫がもらっていた年金約219万円の4分の3の約164万円が遺族年金としてもらえるというのは大きな誤解で、上記の例の場合は実際の遺族年金は87万円にすぎません。
びっくりですね!
妻の厚生年金が大きい場合はさらに遺族年金は少なくなります。
妻の厚生年金がもっと多い場合
妻が年額120万円の厚生年金をもらっていた場合はどうでしょうか。
① 140万円×3/4=105万円
② 140万円×1/2=70万円
120万円×1/2=60万円
合計130万円
①と②の高い方が遺族厚生年金になりますので、遺族厚生年金は130万円となります。
ここまではいいんですが、亡き夫の遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となるというルールですから
遺族厚生年金は年額130万円ですが
自分の老齢厚生年金は年額120万円で、この年額120万円は全額支給となります。
そして、遺族厚生年金130万円のうち120万円が支給停止となり、遺族厚生年金の支給額は差し引き年額10万円です。
この場合残された妻がもらえる年金は
妻の老齢基礎年金 満額で年額79万5千円
妻の老齢厚生年金 年額で120万円
遺族厚生年金 年額で10万円
合計で年額209万5千円 月額では約17万4千円 となります。
亡き夫の遺族年金なんて無いに等しい!
それでも妻の厚生年金が年額80万円の場合よりは多い年額がもらえますが、亡き夫の遺族年金はほとんどもらえないことになります。
この内容は2025年4月現在です。
もう一度お手元の年金額改定通知書を確認して計算してみてはいかがでしょうか。
やはり、老後のたくわえはある程度必要ですね。
さらに詳しいことは、日本年金機構のホームページをご覧ください。
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