106万円の壁が2024年10月からさらに拡大されます。
今(2023年5月)現在の、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対する社会保険(厚生年金保険、健康保険)の壁である106万円の壁の適用拡大状況を追ってみました。
2016年10月から、従業員数(被保険者の総数)が501人以上となる企業に対して社会保険の適用拡大が行われました。いわゆる106万円の壁です。
2022年10月からは、これまで「501人以上」だった勤務先企業の従業員数が、「101人以上」に引き下げられ、さらに2024年10月からは「51人以上」まで引き下げられます。
2022年10月から社会保険の適用になったのは次の5条件をすべて満たす場合です。
1.勤務先の従業員数が101人以上
2.週の所定労働時間が20時間以上
3.月額賃金が8万8000円を超える
4.雇用期間が2か月超の見込み
5.学生でないこと
賃金月額8万8000円とは年額で105万6000円となり、月額8万9000円では年額106万8000円となるため、106万の壁は賃金月額8万8000円までとされています。
この拡大で、「106万円の壁」を超えることによって社会保険の適用となるのを避けようと、勤務時間を減らすパート・アルバイトさんが増えました。
さらに2024年10月からは勤務先の従業員数が「51人以上」にまで拡大されるため、さらに多くのパート・アルバイトさんが106万円の壁を超えて社会保険の適用になってきますね。
まずこの月額賃金8万8000円というのは、通勤手当は除かれますが、休日加算、祝祭日加算、常態化している時間外労働は含むとされているため、時間単価に休日加算単価などを加えて月額給与を出す必要があります。
そして昇給や最低賃金改定などで、いつの間にか月額8万8000円を超えてしまう場合があります。
一般的な企業では、3カ月連続で8万8000円を超えた場合は、他の月が8万8000円以下であったとしても社会保険に強制加入になってしまいます。
パート・アルバイトさんの注意したい点は次です。
★ 社会保険に加入して106万の壁を解消するのか、106万以下に押さえてでも社会保険の加入を見送るのか。
これが大前提になります。
◎ 社会保険に加入したほうが良い方とは
1.今現在、国民年金保険料を自分で収めている方
この方は、配偶者が民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者ではなく(退職や自営など)、1号被保険者として配偶者とあなたが国民健康保険に加入し、あなたは自分の国民年金保険料を自分で納めています。
国民年金保険料は月額16,520円を毎月支払いますし、配偶者はあなたの国民健康保険料(平均的には1万円前後)と合わせて世帯分を毎月2万円前後支払っています。
この方が、勤務先の会社で社会保険に加入すると、社会保険料の半分は会社が支払うことになっていますから、月額賃金を約10万円とすると、あなたの支払い分は厚生年金保険と健康保険をあわせて月額約1万5000円ほどになります。(同額を会社が負担します。)
ここがポイントですが、厚生年金に加入すれば国民年金を納める必要がありません(2号被保険者となる)から、実質手取り賃金はほとんど変わりません。
※ 厚生年金保険が適用されている事業所に勤めれば、自動的に国民年金に加入することになります。これを国民年金の第2号被保険者といいます。
国民年金の第2号被保険者の保険料は、あなたが加入している厚生年金保険が国民年金の費用を負担しています。自分で国民年金の保険料を納める必要はありません。
(※ 日本年金機構のサイトより引用)
むしろ厚生年金加入で将来の年金額が少しでも増える見込みがあるため、106万円の壁を超えても、むしろお得です。
ちなみに月額賃金が約15万円だと、社会保険料のあなたの負担分は月額約2万円ほどになります。(同額を会社が負担します。)
2.これを機にもっと長時間働こうと思っている方
いままで106万円の壁を守って月額賃金8万8000円以下でいた方が、これを機にもっと長く働こうと思っている場合です。
月額賃金9万円で社会保険に加入した場合は、あなたが負担する月額社会保険料は約1万3000円ほどです。
月額賃金9万円は年収で108万円です。ここから社会保険料が年間15万6000円引かれると、差し引きで手取り賃金は年収で92万4000円になってしまいます。106万で働いたときより年収が減ります。
年収106万円で働いたときより年収が減らないのは年収約124万円前後からになります。できる範囲で年収130万円を超えるような長い時間を働ける方にはおすすめです。
一つの例として、月額賃金15万円で働きたい場合をみると
月額賃金が15万円だと社会保険料の負担は月額2万円ほどになります。
年額で見ると賃金年収が180万円に対して社会保険料が年額24万円ほどですから、実質年収は156万円です。
社会保険料を負担しても、それ以上の収入が見込めるわけですから、この選択はありだと思います。
◎ 社会保険に加入しないほうが良い方とは
配偶者の被扶養者になっていて、それを続けたい方です。
具体的には、配偶者の健康保険の被扶養者になり、国民年金は3号被保険者として免除され、場合によっては配偶者の会社から扶養手当をもらっている方です。
106万円の壁を超えるときは、年収賃金で124万円、月額賃金で10万3000円以上働かないと実質年収で106万円を超えることができません。
さらに年収106万円を超えると、配偶者の会社から出ている扶養手当も打ち切られます。扶養手当は月額1万円もらっているとすれば年額で12万円ですから、実質的な世帯年収はさらに減ることになります。
扶養手当も加算すると、年収賃金で136万円、月額賃金で11万3000円以上働かないと、106万円の壁を守ったときより実質収入が減ります。
これは、今より長時間働くことになるので、小さいお子さんがいたりして、これができない場合は、106万円の壁を守って現状のままのほうがお得です。
月額賃金の注意点について
1.月額賃金は、1日の勤務時間と1カ月の勤務日数に時間単価をかけて、8万8000円を超えないことが重要です。休日加算も計算に入れます。
2.8万8000円を余裕を持って下回ることが大事で、ギリギリでは繁忙期に超えてしまうことがあるかもしれません。
3.一般的に、3カ月連続で8万8000円を超えた場合は、他の月が8万8000円以下であったとしても社会保険に強制加入になってしまいます。
国は、106万円の壁に対して救済策を考慮するとしていますが、内容は分かりません。国は社会保険を施すための収入がほしいわけで、国の収入を減らすような還元が国民にあるとは考えがたいです。
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